~ 菜 乃 庵 ~

ユルイ生活blog.目指せオトナのsimple life.

間違い電話


携帯に登録していない番号からかかってきた電話には滅多に出ない。


本当に本当に滅多に出ない。なのにどうして今日は出る気になったのか。
番号には全く覚えはなかったし、何かの用事で誰かから電話がかかってくる予定もなかった。
いつものように点滅する電話番号を横目で見るだけのはずだったのに、出てみようかな…と思ったのは本当に気まぐれでしかない。


もしもし


と声をかけた先は無言だった。しまった!と思ったその時


××さん?


と相手は私の名前を呼んだ。


声に聞き覚えがなかったので、私は用心のために「はい」とは答えず、「どちら様ですか」と問いかけた。でも相手は答えずに


××さん?


と繰り返す。かけてきたのはそっちなんだから、まず自分の名前を言うのが礼儀じゃないの?とちょっと苛立って切ろうかと思ったら


××さんじゃないの??


と向こうも不安気に問いかける。えっと…どなたですか?と、もうほとんど自分が××であることを認めたように返事をしたら


○○です。


と相手が答える。


○○さん…。
その名前にはすぐにピンとは来なかったけど、全く知らない名前ではなかった。


お久しぶりです。お元気でしたか?


と相手が親しげに話し出す。
その話し方で、ようやく○○さんがどこの誰だか、私の中で明確になった。


うわーお久しぶりです。


ゲンキンなものである(笑)相手が誰だかわかると警戒心は一気に吹き飛んだ。何のための電話かは全くわからないのに、私は安心してしまった。


○○さんは、前に勤めていた会社の5つ年上の先輩だった。彼女と私は部署は違ったけど、少し似たような仕事をしていたので時々情報交換をする仲だった。けれど、決して親しくはなかった。

私はその会社ではちょっと特殊な仕事をしていたので、会社をやめた後も数ヶ月、仕事のフォローをするにあたり、何人かの人と携帯電話の番号交換をした。彼女もそのうちの一人だった。

辞めてから数回連絡があったけれど、あくまでも仕事のことで私的な関係ではなかったし、会社をやめて数年後に携帯を変えたときに、私は彼女の情報を削除してしまっていた。


それでも、いやそれだから、あまりにも懐かしくてびっくりした。


ひとしきり、私がやめた後の会社の状態や人事について話が咲いた。彼女もいまはそこを辞めて、セールスをしているとのことだった。生命保険だったから一瞬かまえたけど、よく聞くと、彼女も私に電話がしたかったのではなく間違えたそうだ。

かけたつもりの相手とは違う相手が出てびっくりしたんだろう。携帯を確認すると私の名前だったけど、私が「はい」といわないので、彼女も疑心暗鬼になったみたいだった。そりゃそうだよね。

多分もう話すことも会うこともないと思っていた人との会話。仕事は好きだったけど、その会社の社風も働いている人たちの考え方も嫌いだった。だけどどんな出来事も、過ぎてしまえばセピア色。懐かしく話が出来るもんだね。


あぁだけど、本当にどうして今日に限って電話に出る気になったんだろう。彼女だって私と話がしたくてかけてきたわけではないのに。出なかったらそのまま知らないことだったのに。ホント不思議だなぁ。

これからは知らない番号から電話がかかってきても、躊躇せずに出てみようかなぁ。なんて思った出来事でした。