雨はコーラがのめない

雨はコーラがのめない (新潮文庫)

好きなアルバムというのは、ずーっと、あるいは折にふれて聴き続け、たいてい自分の「定番」となる。しかし、稀に、定番にならずしまい込まれるものがあり、そういうものは、聴くと瞬時に特定の時期およびその日々の状況、聴いていた部屋の様子まで浮かんでしまう。それは、現在に満足しているときににだけ、ちょっと愉しい「特別」になり、そうでないときは、容赦のない気恥ずかしさと、ある種の痛々しさをつれてくる。

雨は江國さんが飼っている犬の名前で、雨と一緒に聴く音楽について語ったエッセイ。私も犬を飼っていたことがあって、犬の描写のところではものすごく切ない気持ちになって、その時聴いていた音楽と犬の匂いと肌触りなんか、もう全部懐かしく思い出して、胸がきゅんきゅんして仕方なかった。

シンプリーレッドの「IF YOU DON'T KNOW ME BY NOW」の♪If you don't know me by now, you will never never never know me♪という感情を、そしてneverはどう考えても三度いる、ということも、私はもう知っている。