~ 菜 乃 庵 ~

ユルイ生活blog.目指せオトナのsimple life.

家族

いずれまた。と思ったけれど、思うところがあった時に書き留めておく。


家長である父は絶対的な存在だった。母は働いたことのない世間知らずで、二人で築いた「家庭」を守ることに専念した。少しでもよく見せるために見栄をはり、世間体をことさら気にするような人だった。

父は母を、母は父をリスペクトしていた。普段の父は無口で怖かったけれど、決して意味なく怒鳴り散らしたり、女子供に手を挙げたりはしない、本当の意味で亭主関白だったと思う。


母は父の靴下を脱がせてあげたり、お風呂で背中を流してあげたりしていた。父のおかずだけ子供より多くて豪華だった。それは働く男へのご褒美だと教えられた。私達姉妹も父に従い、母に従った。

私が小学校に上がる前、弟が生まれた。赤ちゃんは可愛かった。母を助けるためのお手伝いが増えた。

何の疑問もなく過ごしていたある日、私だったか妹だったか、どちらが原因かは覚えていないけれど、母にひどく叱られた。理由はこうだった。


「男の子を跨いじゃいけません。足を向けてもいけません」

「なんで?」

「この子は男だから」

「だからなんで?」

「男は女より偉いから」

「なんで?」


延々に続く質疑応答(笑)父にそうしてはいけないことは十分理解できても、年下のまだヨタヨタの弟が、私達姉妹より格上だということが、子供には理解できないし、する時代でもない。でもうちの家族はそんなだった。

「男女七歳にして席を同じくせず」

何度こう言われたでしょうか。でも小学校では男の子も女の子も同じ教室で同じように勉強している時代です。私達姉妹は弟を可愛がるというよりも、次第に嫌悪を抱いてしまいます。

弟をリスペクトできる理由が見つからない。男だというだけで女より上?当の本人は「男」という待遇に年々調子にのってきます。だって子供だから。


弟は「男」というだけで、我慢しない子供として育てられます。末っ子ということもあったとは思いますが、欲しいものは全部。姉二人を顎で使うというワザも、父を見て覚えます。

私達姉妹には日課となっているお手伝いがありましたが、弟にはそんなものありません。「男子厨房に入るべからず」うちの家族は父と弟を中心に動いていきました。私達姉妹は辟易しました。その男女差別に。学校では皆平等なのに。

私は本気で男になりたいと思い、自分を「僕」と呼び、スカートをはかなくなりました。小学3-4年生の頃だったかな。反抗期もあったんだと思う。


だから私は「男」というだけで威張っている男がダメ。裏付けもなく、男だというだけで女から世話をされて当然と思っている男が苦手。それを強要する人は嫌い。

父は強要なんてしてなかった。母を愛し、母を大事にしていた。だから母は父に従えたのだと思う。母が働いたことがなかったのも大きい理由の一つかもしれない。どこへ行っても父は母を、母は父を褒めた。そんな関係だから、母も自然と心から父の世話が出来たんだろう(と思う)。

でも弟は違う。私達姉妹が、弟を父と同じ存在として扱うことは出来ない。母には出来ても、私には出来ない。だって弟は家長ではなく、ただの長男だから。私達は弟の稼ぎで暮らしているわけでもない。どうして何をリスペクトして、父と同じ待遇になるのか、全く理解できなかった。

弟がそれを求めていいのは自分の配偶者になる相手であって、私達姉にそれを求めるのは間違っている。母が私達にそれを強要するのも間違っている。両親の間違いはここにあったと思う。「男」だからという理由で「女」が従うのは違う。

女がリスペクト出来ない男の世話をするなんてあり得ない。なのに社会に出ると、多くの男が弟のように考えるということを知った。女は男に従うモノ。

育ってきた環境はある程度影響するような気がする。弟が生まれなければ、或いは、両親が男女を育て分けしなければ、もう少し私も柔軟に受け入れられたかもしれないなぁとは思う。

尊敬できる男に対して1歩退く距離があることを、私は母を見て覚えた。自分が好きな男には、つきあい始めると少し世話焼きになる傾向もある。けれど、それを指図されたり、強要されたりする覚えはない。ここを根本的にわかっていない男も多い。


男だから。結婚したのだから。自分は世話をされて当然と思う。けれど父の時代とは違う。女だって働いている。自分のことは自分で、が基本になっている。

そんな自立した男と女が出会い、つきあい、自立した家庭を築こうとするその時、何故か再び親の支配下に入る。この矛盾。好きな男の親とは血のつながりもないのに「嫁」という立場になると、従わざるを得なくなる。何故?

そしてうちの両親もそれは同じだ。「婿」に対して条件を出す。要求が増える。親に対してこうあれと。うんざりする。何様?妹はこれで親と絶縁。

「家族」になると「距離」がなくなるのだ。人と人の距離。人として必要な距離。それがなくなる。全員がそうだとは言わないけれど、少なくとも自分の親の世代はその傾向にあるみたい。そして私みたいな女は、それを息苦しいと思ってしまう。

結局、父と母で完結していればヨカッタのだ。今、うちの実家には弟夫婦しか帰らない。