~ 菜 乃 庵 ~

ユルイ生活blog.目指せオトナのsimple life.

ほのかな恋心

段ボール箱の中には、初めてもらったお給料明細だとか、海外に住んでいる友達からのハガキだとか、お誕生日に会社の方がしてくれた寄せ書きなんかも入ってました。



自分でも驚いたのはスケッチブックと色鉛筆(水を落とすと水彩になる)が出てきたこと。そういえば絵を描くのは好きだったなぁ。

時間に追われて日々忙殺されると、そんな余裕はなくなるのよね(苦笑)


押入にあった段ボール箱は全部で4つ。まだ全てを引っ張りだしたわけではないけれど、この思い出シリーズもこれを最後にしようと思います。


見つけたのは古い手帳に挟んであった一枚の年賀状。それは写真付きで、本当に久しぶりに見て懐かしくなりました。


以下、不倫の話じゃありません。でも読む人の立場によっては許せないと思われるかも知れません。
そういうお話が苦手な方はスルーしてくださいね。


文章がうまくまとめられずに長くなりました<(_ _)>


私がまだ会社勤めだった頃、一人の男子社員がとても好意的でした。その人は年下でしたが既に結婚していて、子供さんもいらっしゃいました。

私は昼休みも一人でいることが多く、そのせいか話しかけやすかったんだと思います。仕事の合間や休み時間に彼はよく話にきてました。

人としてその人のことは嫌いじゃなかったのですが、私自身はプライベートな話は避けていました。彼に興味もなかったし、同じ職場なので変に噂されても困るし、何より恋愛対象外でしたから。

ある年の春、彼と朝の電車の時間帯が同じになって、駅の改札で一緒になることが多くなりました。駅から会社までの十数分間、二人だけで肩を並べて歩きました。会社とは違って開放感があるせいか、時々プライベートな話もするようになりました。

毎日というわけではなく、多くても週1回程度。それでも会社で話すより親しみは日々増していきました。会話が楽しい人だったので、私も何となくその時間が楽しみになりました。


秋も深まった頃、彼がある朝ポツリと言いました。

「僕、今年いっぱいで会社やめるんです」


特に驚きませんでしたが、そのことについて私からは何も言いませんでした。でもちょっと残念な気持ちはありました。仕事上の区切りや段取りもあるので、何日付けでやめるのかなど、彼は私に淡々と語っていました。

そして

「もし良かったら一日だけ思い出を作ってもらえませんか?」

と言われたのです。


私はすごく戸惑いました。社内では仕事の話は普通にしていましたが、それからしばらくは電車の時間をわざとずらして会わないようにしてみたり…。彼もそれに気がついていたようで「避けられている」と感じていたと、後で聞きました。


電車の時間をずらしてみても、電車そのものが遅れることはよくある話で。。。


ある日、思いがけず朝の改札で彼と一緒になりました。少し居心地が悪かったのですが、彼がいつもと同じように話しかけてくれたので、私も意識せずに彼と一緒に歩き出しました。

なぜか遊園地の話になって、私は無類のジェットコースター好きで、


「一緒に乗ってみたいなぁ」と彼が言いました。


さりげなくスルーして話題を変えようとしたのですが、


「一日だけ一緒に遊びに行きませんか?」と再び誘われました。


彼のことは好意的に見ていましたが、その時はまだ好きという気持ちはありませんでした。いや既に好きだったのかな。本当はよくわかりません。

でももう会社を辞める人なんだし、その後つきあうわけでもないから、一日くらいならいいか。そんな風に思いました。遊園地という具体的な提案が、つきあいやすく感じたせいもあったと思います。


「それも面白いかもね」


それから二人で一緒に休みを取れそうな日を相談しました。こういう共犯的な気持ちってヤバイですよね(笑)


11月のある日、二人で休みをとって遊園地に行きました。通勤時間の延長線上にある関係。遊園地で前後左右になりながら、一緒に乗り物に乗ってキャーキャー無邪気に遊んでいました。


スピードのある二人用の乗り物に乗ったとき、私が前で彼が後ろで、私の髪が彼の頬にあたったその時に


「あー俺もう死んでもいいわー!*1


って大きな声で叫んでました。いい年をした大人が少年のように。それが可笑しくて、何だか切なくて。


当然手をつないで歩くわけでもなく、もちろん腕を組むわけでもなく。少し子供の頃に戻ったみたいに、ちょっと恥ずかしくて遠慮がちにつかず離れず歩いてました。

写真を撮れる関係でもないので何も残すことは出来ませんが、一緒にいるその時間を彼が本当に大事に楽しんでくれている感じが伝わってきました。

夕闇迫る遊園地。デートだったら最後はお決まりの観覧車。私は内心、これだけは避けたほうがいいかも。どちらかというと避けるべきかも。と思ってました。なのに。


「観覧車…」


彼がそうつぶやいて、二人で観覧車の下に立って見上げてました。



「乗る?」

そう聞いたのは私でした。


「うん。乗りたい」

速攻で返事する彼。


二人で観覧車に乗り込んで、でも隣に座るわけじゃなくて。何となくその狭い空間で時間と空気が煮詰まってくる感じ。


綺麗だねー。とか、高いねー。とか、お互い別々の窓の外を見てつぶやいたりして。


観覧車が一番高くなろうとした辺りで、少しの沈黙のあと、彼が言いました。


「わかっていたと思うけど、僕ずっと××さんのことが好きだった。だからどうじゃないけどただ好きだった。今日は本当にありがとう」


うん。本当はわかってた。だからどうじゃないけど。その気持ちを伝えたから、どうなるわけでもないし。だったら伝えなくてもいいじゃないかって思う人もいるだろうけれども。多分私は彼からその言葉を聞きたかったんだ。


「こちらこそ、楽しい一日をありがとうございます」


観覧車を降りて、照れくさい気持ちで遊園地を後にしました。一緒に晩ご飯を食べておしまい。


それから一ヶ月後、彼は職場を去っていきました。


彼が会社を辞めた翌年のお正月。家族で撮った写真つきの年賀状が送られてきました。彼は子供をだっこしていて、彼の横には奥さんが笑っていて、とても幸せそうな写真でした。

年賀状には「楽しい思い出をありがとう」と一言だけ書かれていました。年賀状を交換したのはその年だけで、それっきり彼とは連絡を取っていません。元気にしてるかな。


もう二度と彼に会うことはないですが、知らないところで旦那さんが一日でもこういうことしてたら、やっぱり奥さんは嫌なんだろうなぁ…。これもりっぱな浮気になっちゃうのかな。

結婚してても恋愛してても、ふいに誰かが気になることはあると思うけれど、結婚は契約なので、契約書にサインした限りはルールを守らなくてはいけない。気にしない人もいますが、一応気にするのがルール。


時々友達と、体と心の浮気はどちらが許せるかという話になるのですが、たいていの場合、体の浮気は許せるけど、心の浮気は許せないって言いますよね。

心の中にパートナー以外に好きな人をおいておくのは心の浮気になるのかな。難しいところですね。



同じようなことがその数年後にも一度ありました。こちらは既婚者ではありませんでしたが、このことは過去のblogに書いたことがあります。(*その1* *その2*) 今でもその人からは、近況報告を兼ねたメールが時々届きます。

前述の彼とその人は仲が良かったので、もしかしたら彼からこの話しを聞いていたのかも知れません。

ただ独身同士だと、そのニュアンス次第では始まってしまう場合もあるので、ちょっと慎重になってしまいます。

その点、何も始まらないことが前提の既婚者の方とは楽におつきあいできるのですが、それで周囲や本人を誤解させてしまうこともあるので、二人だけというのはやはりいろいろマズイですよね。

男友達はもうほとんど既婚者で、彼らと二人で楽しい時間を過ごすのはなかなか不自由になりました(笑)


※記事を読んで、不愉快に思われた方がいらっしゃったらごめんなさい。アンタみたいな女が一番迷惑!って声が聞こえてきそうです(猛省

*1:本当は「あー俺もう逝ってしまいそー!」でしたが(笑